3.心不全

疾患概要

心疾患は日本における死因別の順位では癌に次ぎ2番目に多くなっています。 そのなかでも心不全による死亡は最も多く、年々増加しており2020年には120万人に達するとされています。 当院でも罹患されている患者様が一番多い疾患です。

心臓の働きは体の各部位への必要な酸素や栄養を含んだ動脈血を送り出し、二酸化炭素や不要な代謝物を静脈血で回収することです。 また、活動時には筋肉などに多く血液が必要となる場合や、出血による血液量の減少する場合など、体に生じる様々な変化に対応するために、ポンプとしての機能を調節する機構が備わっています。

心不全になると、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。 原因疾患は高血圧症、心筋梗塞、弁膜症、不整脈、先天性疾患、心筋症等の様々な病気があります。

症状

様々な原因により心不全になると、心臓の機能が低下し、心臓が十分な血液(栄養や酸素)を 受け取れずに体に血液が滞ったり(体うっ血)、心臓から体側に血液(栄養や酸素)を送り出せずに 心臓や肺に血液が滞る(肺うっ血)状態となります。 この状態になると、坂道や階段での息切れ、全身の倦怠感、体重の増加、顔や足等のむくみ が症状として現れるようになります。重症であれば症状はより著明に出現します。

心不全の重症度はガイドラインにも示されており、軽症から重症まで段階的に分類されており、重症度により治療目標が異なります。ステージA・Bは心不全発症のリスクがある方で器質的心疾患の有無により分類されています。そして心不全の症状を認めるとステージCとなり、心不全の増悪を繰り返しながらステージDへと進行していきます。症状はステージDへと進行するほど著明に出現してきます。心不全は完全に治癒することがなく、時間経過と共に身体機能の低下を伴いながら進行します。 また、高齢心不全患者の治療に関するステートメントでは心不全は、根治が望めない進行性かつ致死性の疾患であると述べられており、生涯にわたる長期的な治療がとても重要となります。

治療

心不全慢性期の治療目標は①予後改善、②心不全増悪による再入院の予防、③症状や生活の質(QOL)の改善、 ④突然死の予防に分けられます。また治療として大きく分けて、薬物療法と非薬物療法があります。

薬物療法 ……… 血圧を下げる薬や、尿が出しやすくなる薬などを利用して、心臓への負担となる併存疾患に対してコントロールを行います。

非薬物療法 …… 薬での管理が難しい場合などでは、植込み型除細動器(ICD)や、植込み型人工心臓、心臓移植などの外科的な治療を行います。 また、リハビリ含めた運動療法や、食事療法などもこちらに分類されます。

心不全の治療と同時に併存疾患の治療も行います。

当院では薬物療法に加え運動療法、食事療法を中心に行っています。
また陽圧呼吸療法や在宅酸素療法のような呼吸を補助する機械を使用して治療を行います。