1.虚血性心疾患(狭心症、急性心筋梗塞症)

疾患概要

心臓は一日10万回拍動し、約8トンもの血液を全身に送り出す臓器です。心臓の筋肉(心筋)は表面を走行する冠動脈から新鮮な血液の供給を受けています。
この血管が細くなり血流が悪くなって起こるのが狭心症で、血管が塞がれ血流がストップして筋肉が壊死を起こすのが心筋梗塞です。

狭心症の症状

おもな症状としては、心臓を栄養する冠動脈が狭くなり、心筋が十分に働くだけの血液が流れなくなることで、胸が圧迫されたり、しめられたりします。 時に、あごや腕に痛みがひろがったり、のどがしめつけられたりします。冷や汗、めまい、息切れを伴うこともあります。症状は一次的で、30分以上続くことはまれです。狭心症には3つの種類があります。

  • ①労作性狭心症
    動脈硬化により血管が狭くなるため、運動や緊張した時に発作が生じ、安静で良くなります。
  • ②冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症
    血管が一時的にけいれんを起こすもので、夜間~明け方、午前中の軽い運動で発作が起こります。
  • ③不安定(ふあんてい)狭心症
    動脈硬化の成分がくずれて血のかたまり(血栓)が生じ、一時的な閉塞を起こすもので、心筋梗塞に移行することもあります。数日前から急に胸が痛くなった場合は不安定狭心症が考えられますので、直ちに専門病院を受診されることをお勧めします。
主な血管狭窄原因
労作性狭心症
①アテローム硬化(粥状動脈硬化)
コレステロールなどが血管の内壁に沈着し、粥状の塊となって硬化し、血管を塞ぐ
冠攣縮性狭心症
②冠攣縮(スパズム)
冠動脈の攣縮(=スパズム)によって一時的に冠動脈に狭窄ないし閉塞が生じる
不安定狭心症
③血栓による一時的な閉塞

診断の流れ

検査

現在の狭心症の特殊検査として心臓CTと冠動脈造影(CAG)があります。
心臓CTは高い精度があり撮影時間が15分程度と短くバイパスの血管の評価もできます。
欠点としては放射線の被ばくがあり、造影剤が必要であるため腎臓が悪い患者さんでは腎不全の危険性が高くなります。また血管に石灰が付着している場合は評価ができないことがあります。 CAGは手首や大腿部に局所麻酔を行い、カテーテルという直径1~2㎜の管を心臓まで挿入し、造影剤を注入して撮影します。1~2泊の入院が必要です。

治療

薬物療法

目的:心臓の負担軽減・血栓予防・動脈硬化・進行抑制と発作時の対応

狭心症の薬物療法

A. 心臓の負担を軽くする

冠状動脈を拡張して血流をよくする ………硝酸薬・カルシウム拮抗薬
心拍数や血圧を低下し、心筋仕事量を軽減 ………β遮断薬

B. 血栓を予防し、血管を詰まりにくくする

抗血小板薬 ………低用量アスピリン(一生飲み続ける)
クロピドグレル (1カ月もしくは6~12カ月)

C. 動脈硬化の進行を抑える

コレステロール低下薬 ………スタチンなど
降圧薬 ………ACE阻害薬・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬・カルシウム拮抗薬・β遮断薬
・糖尿病治療薬

D. 発作時の対応

ニトロペン舌下

治療

侵襲的治療

カテーテル治療(PCI)
血管の狭い場所や詰まっている場所に細い金網(ステント)を留置する局所治療であり、血のかたまり(血栓)予防のため抗血小板薬(サラサラの薬)の服用が当分必要です。入院は3-4日程度ですみます。

ステント留置術

ステント(網状の金属の筒)をかぶせたバルーン付きカテーテルを動脈狭窄部に挿入し、ステントで内腔を支えるように留置して血管を拡張させる。

冠動脈バイパス手術(CABG)

冠動脈の狭い場所より遠位部にう回路を作ることにより一度に多くの病変部の治療ができます。通常は全身麻酔で5~8時間の手術となり2週間前後で退院できます。